<【ゴミ屋敷】③退室立ち合いで見た壮絶な光景>

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夫の管理する賃貸物件の退室立ち合いを代行。
・退室者Nさん(71歳男性)
・長屋住宅に25年居住されてましたが6ヶ月の家賃滞納の末、退去勧告。






キッチンはすっかりゴミがなくなり
4.5畳の和室と
6畳の和室を
私と作業員さんが二手に分かれて
片付けていきます。


6畳の和室には
壊れたテレビや
崩れかかった本棚、
そして大量の小説の山。


コタツも壊れかけていて
天板はなくなり
綿の出たぼろ雑巾のような
コタツ布団がかかっています。


そして、
人型に沈んだ畳の跡。



おそらくNさんは
布団を敷いたりせず
一年中、このコタツに足を入れたまま
この場所で寝ていたんだと思います。


畳は湿気と汚れで
あちこちぶよぶよになって

所どころ、「ぐにゃり」と沈み
今にも床が抜けてしまいそう。



それでも、積んである本だけは
背表紙が◯◯文庫ごとにきちんと分けてあり

難解そうな哲学の本や美術史、
SFと言えばのハヤカワ文庫青表紙など
かなりの冊数が整然と置かれています。


本は残して欲しいとの希望だったので
段ボール箱に詰めていると


いつの間にか、
隣に佇むNさん。
(気配がしない人なんですよね・・)


「昔はさ~、読書家だったのよ」
「これでもオレ、◯◯大(有名国立大学)出てんだよ」



「へえ~、すごいですね」


「そ。地元でも100年に一度の秀才とか言われてさ」
「東京で出世したら田舎に帰って議員でもやろうと思ってたんよ」
「オレの田舎、貧乏百姓ばっかだから」
「政治で変えてやるーとか思ってたんだけどさ」
「いざ来たら、人生の計画が狂っちゃったんよ」



「何かあったんですか?」


「大学出ていい会社に雇われたと思ったらさ」
「2~3年で、結核」
「はいびょー、ってやつだな」
「普通なら薬で治るんだけど」
「オレのはなんか効かなくて」
「入院です、ってなって色々薬試してさ」
「何とか死なずにすんだけど、もう普通の人みたいに仕事できんくなって」
「会社にも悪いから辞表出して」
「それからずっと、親父が持ってたアパートの管理人」


「そうだったんですか・・」


「病気になんなければさ」
「あのままエリート社員、なんて言われて」
「美人の嫁さんもらって家建てて」
「金貯めて地元で議員やってた予定なのにさ」
「親父が死んで、相続税でアパート手放して」
「残った金で細々とさ」
「オレ年金ないからほんと、月に7~8万で暮らしてさ」
「なんとかやってたけど、ついに金なくなったってワケ」


。。。。。。


そうだったんだ・・・


私は現在のNさんと
この惨憺たるゴミ屋敷のインパクトが強すぎて

Nさんがどういう人生を歩んできたかとか
まったく想像できてませんでしたが

輝かしい人生のはずが
病気によって狂ってしまって
どんどん修正できなくなってしまい
こんな生活になってしまったんだなあ。



その暮らしぶりや
見た目の風貌や言動だけで
「変人認定」していた自分に
後ろめたさを感じました。


「Nさんの本、ハヤカワ文庫が多いですね」
「SF好きなんですか?」
「詳しくはないけど、ヴォネガットとか面白いですよね」


そう言うと
Nさんは突然目を輝かせて


「あ、ヴォネガット読むの」
「ならアーヴィングとかハインラインとかも読むといいよ」
「これとか、これとか、持ってっていいよ」



詰まれた本の山から
いくつもの単行本を探し出して
どさどさと私の前に置き始めました。


「そんな、Nさんの大切なご本ですから」
「いただけませんよ」



慌てて断りましたが、

Nさんはかまわず
段ボールいっぱいに本を入れて
私にぐいぐいと押しつけ、


「オレはさ、もう飽きるほど読んだから」
「頭の中に入っちゃってるから」
「若い人に読んでほしいのよ」



と、有無も言わせず
渡されてしまいました。。



つづきます。
次で終わりです。


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